2005.5.17


郊外を田園に再生する
(住団連会報、2002.12より)

 郊外は、これまで住宅産業の主戦場であった。新築住宅が次々に建ち、新しい技術や様式が花開いた。その郊外が、今、岐路に立たされている。

 その原因は、一般には、人口減と都心回帰の影響とされる。しかし、真実は違うのではないだろうか。最大の原因は、これまで生み出してきた「郊外住宅地」が、あまりに魅力に欠けることにある。

 もし、郊外に魅力があれば、人口減の時代であっても、中古流通、リフォーム、建替えを通して、一人一人のゆとりを拡大する方向に進むはずだ。しかるに、現実は違うようにみえる。多くの郊外では、住宅に対する投資は停滞し、ともすると衰退の方向に進もうとしている。

■中途半端な日本の郊外

 日本の郊外は、ゆとりある住環境としては中途半端だ。

 敷地は150平方メートル程度、200平方メートルあれば広い方だ。この程度では、市街地の住環境と決定的な差異はない。それならば、地価が下がれば、より便利な場所を求めて都心回帰しようとするのもやむを得ない。しかも、老後は車生活が不安になること、そしてサラリーマンにとって子供との同居はアテできないことを考えれば、郊外に留まる理由に乏しい。

 しかし、欧米、そして多くのアジア諸国では、市街地と郊外の住宅には明瞭な差異がある。そして、ほんの半世紀前の日本でもそうであった。長屋や町家による高密度な市街地があり、そこを一歩出ると自然に囲まれた豊かな田園風景が広がっていた。

■郊外の再生に向けて

 これからの住宅産業の課題は、真の市街地住宅、真の郊外住宅を確立し、その定着に向けて、限られるだろう投資を集約することである。

市街地住宅の話は、別の機会に譲るとしよう。では、真の郊外住宅とは何か。私のイメージでは、敷地は500平方メートル/戸程度、地域の景観を守る規則をもち、自然豊かな共用緑地を有する。さらに、普段は車生活だが、その代替となる宅配や送迎等の生活サービスが整っている。まさに、「田園住宅地」と呼ぶにふさわしいイメージだ。

 現在の郊外を、このように再生するのは至難だろう。しかし、地価が下落した今こそチャンスかもしれない。具体的には、敷地の間引きと緑地の創出、景観協定の創設、高齢者や共稼ぎ世帯を支える生活サービスの構築等である。もちろん、相当戸数がそろわないとサービスの基礎費用は出ない。近接する住宅地の連携も進める必要がある。

 このようにして、郊外が「田園住宅地」として再生できれば、市街地とは明瞭に異なる住環境のあり方が確立する。それを求めて中古住宅の流通が活発になり、住宅改修や建替えも進むだろう。住宅産業の出番が再びくるはずだ。

 官民をあげて、田園を生み出すべく郊外再生事業に着手する時である。

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